こんにちは。ShareWisの辻川です。
先日タイ、バンコクで開催されたEdTech Asia SUMMIT 2016に参加してきました。
イベント会場では、ブース出展を行うとともに、アジア各国のEdTechプレイヤーのプレゼンテーション/パネルディスカッションに参加してきました。
本イベントの参加レポートをまとめましたので、EdTechプレイヤーの方々、興味のある方、は是非ご参考にしてください!
イベント全体を通じて感じたこと
いきなりですが、イベント全体を総括すると、以下の3点が印象的でした。
EdTechサービスの成長はSlow but Steady
他のジャンルのWebサービスと比べて、教育系のサービスの成長速度は遅いというのが、EdTech関連によく投資するVCの方々の共通意見でした。
一方で、成長が遅い代わりに大きな乱高下もなく、安定的に成長するのもこの業界の特徴と言っていました。
スタートアップっぽくないかもしれませんが、じわじわ着実にサービスを伸ばすことが重要なんですね。
政府系と絡むのが成功の鍵
公教育の領域であれ、社会人向けの教育であれ、アジアで教育系サービスを伸ばそうと思うと、政府とのコラボレーションがかなり重要というのが、イベント中の各セッションで度々取り上げられていました。
イベントにはUdemyのRichardさん方も参加されていて、Udemyがシンガポールの政府とがっつり組んでコースを提供し出したニュースを成功事例として紹介していました。
中国とASEANは元気で日本と韓国は元気ない
市場も伸び、人口も増えると、教育ニーズが伸びるということで、中国、ASEANイケイケだぜ!というのがイベント全体の雰囲気としてありました(インドも)。一方で日本が話題に上ることはほとんどなく、ちょっと寂しい気持ちになりました。
参加したトークセッションのレポート
イベント会場では、ブース出展会場以外に、2つのトークセッション会場があり、ブースにいるとき以外はトークセッションに参加していました。
参加したセッションからいくつかピックアップして、内容をまとめてみました。
EdTech Asia: Focus & Probabilities
プレゼンター: Sandeep Aneja, (Kaizen PE)
教育系スタートアップに投資するKaizen PEさんからの、アントレプレナーシップに関するプレゼンでした。
EdTech特異的な内容というよりは、起業一般に関する話でした。
主には以下の2冊の書籍をベースにした話でした。
これ2冊目のやつって翻訳されていないんでしょうか…?
個人的に
Always stay in funding years.
という言葉にぐっときました。初心忘れるべからずですね。
EdTech Growth in Asia as the Next Frontier
プレゼンター: Anip Sharma (Parthenon-EY)
初日の午前中にあったセッションですが、もしかするとこれが一番面白かったかもと思える内容でした。
内容としては、アジアのEdTechマーケットの市場動向と、課題に関するプレゼンでした。
中国と主要な東南アジアにおける、公教育でない私教育の市場規模。
中国でかいですよ、東南アジア伸びてますよ、という内容。
HEはHigher Education(高等教育)の略ですが、こういう場合、高校と大学のことをHEと言うんでしょうか。
EdTechスタートアップへの投資の1/3はアジアが占めていて、さらにそのほとんどが中国ですよ、というお話。
インドとタイが細いとはいえ、表示されているということは、インド、タイが2位、3位ということなんでしょうか。
日本は本当に線みたいな細さと思われます。
EdTechサービスが抱える問題。
オフラインでの教育と比べて、オンラインの教育サービスは強制力があまり働かず、いつでも辞められるので、継続率が下がりがちです。そのため、常に新規ユーザーの獲得を行わないといけなくなり、売上に占めるユーザー獲得コストがオフラインより下がってしまいます、ということを示した図です。
この観点でのサービス改善の方向性としては、
- 低コストでユーザーを獲得する方法を編み出す
- 継続率を上げる
というのがあります。
上記は中国の英語学習サービスを例にとったグラフですが、EdTechサービスには様々なものがあり、全てが同じ課題を抱えているというわけではありません。
他にどういうサービスがあるかというと、教育系サービスは大別すると以下の3つに分類されます。
- マッチング系: 先生と生徒をマッチングさせる系のサービスです。チューターマッチングサービスが中国で特に人気な模様
- コンテンツ系: 教材を提供するサービス。動画ベースが多いです。MOOCsもこれに該当します
- ツール系: 学習記録ツールや、学校内の管理ツール、LMSなんかがこれに該当します
そして、最後にどんな教育系サービスが成功するか?
について3つの方向性が提示され、セッションが終了しました。
- 今まで手に入りにくいものが手に入るもの: 大学のないところに大学の授業を配信したり、1on1レッスンを受けたいけど時間や場所の制約で受けられない人にサービスを提供するようなもの
- 学習の効果をアップするもの: 短時間で効率よく勉強できたり、苦手な部分を重点的に学習できるようなものです。アダプティブラーニングがここに該当します
- 単に安いだけがウリじゃないもの: オフラインより安くできます、だけだと単なる価格競争になるので、何かWebならではの価値があるサービス
アジアのEdTechの市場動向をさくっと知ることができ、とてもためになるセッションでした。
中国すごいなと。
The Digital Transformation of Education
パネルディスカッション参加者:
- David Klett
Managing Director, Klett Lernen und Information GmbH, Germany - Rachel Brujis
Head of Product, Asia, Pearson - Tawan Dheva Aksorn
Chief Executive Officer, Aksorn Education Public Company Limited - Elvin Tan
Knewton - Meredith Karazin
Independent Education Consultant, Educational Consulting
主に学校教育関連サービスに関する話でした。メモったポイントを箇条書き。
- 学校で使うWebサービスについて最も重要なのは「先生を蚊帳の外にしてはいけない」ということ。
K-12のスタートアップでうまくいっていないのは、プロダクトが悪いのではなく、学校に入り込めていないから。意思決定プロセス、予算の付き方についてもっと学ばないといけない。もっと先生に寄り添ってサービスを作らないといけない。 - タイでもタブレットやPCの配布など、ハードウェアの支給を進めているが、ソフトウェア、またそれを使う先生への浸透は進んでいない
- 得たデータをどうVisualizeするかはとても大事。生徒の成績などの数値データをどう分かりやすいかたちで先生が見れるかをもっと考えたないといけない
Understanding ASEAN Education Markets
パネルディスカッション参加者:
- Titipong Pisitwuttinan
Skilllane - Hien Dao
Rockit Online - Herry Rizal
EdTech Indonesia - Anthony De Guzman
Edukasyon
ASEAN各国でEdTechサービスを展開しているスタートアップのみなさんが各国の特徴を語り合っていました。各国についてメモったことをまとめました。
- タイ: オンライン教育2年前だったら、タイでは早すぎ。今はオンライン決済も普及していてサービス展開しやすい。ちなみにこの話はSkilllaneさんのもので、自身のサービスではOmiseという日本発の決済サービスを使っているそうです。
- ベトナム: 学校に入っていくためには、政府を動かさないといけないが、動きが遅い。けれど、政府が入らないとマスには届かない。また、オンライン決済は整いつつあるが、手数料高めでみんな困っている。
新しいものを試すことに抵抗が少ない国民性なので、オンライン学習も広まると早そう。 - インドネシア: 小さい島で分かれているので、1つの地域でうまくいっても、他の地域に広まりにくいという特性がある。コンテンツのローカライズをきっちり行うと広まりやすい。
- フィリピン: 就活難しいのと大学の中退が多い。そこを解決するサービスは人気出そう。
セッションをイラストにまとめたもの
イベントの最後の方で各セッションをイラストでまとめたものが展示されていました。
イベントの運営を手伝っていた学生ボランティアのみなさんが描いたみたいです。スゴイ!
以前、参加したGOEN (Global Open Education Network) というイベントで、梅田望夫さんが、教育は1つの銀の弾丸が問題を解決するようなものではなく、たくさんある綻びを、みんなが少しずつ改善していくことで、より良い教育を築き上げるものだと言っていました。
アジアの各国で、それぞれのやり方で教育をより良くしようとしている人たちと交流することで、自分も自分が問題と思っていることにきちんと向きあおうと思いました。
EdTech Asia来年も開催されたら是非参加したいと思います!
(辻川)
コメント