こんにちは。ShareWisの門脇です。
今日、たまたまこんな記事を目にしました。
エストニア、小学1年生からプログラミングの授業実施へ « WIRED.jp
エストニアの公立学校でまもなく、初等教育の1年目からウェブやモバイルアプリの開発を教えるカリキュラムを取り入れるという。
プログラミングを学びたいと思っているこども達にとって、非常に素晴らしい環境だと思いましたが、気になる点がひとつ。
記事中の「ウェブやモバイルアプリの開発を教える」という言葉がひっかかりました。
僕の考える小学生向けのプログラミング学習とは少しイメージが違ったのです。
ビジュアルプログラミング
小学生向けのプログラミング学習と聞いて僕がイメージするのは、「Scratch」や「VISCUIT(ビスケット)」などのビジュアルプログラミング環境を使っての学習です。
ビジュアルプログラミングとは、テキストを入力するのではなく、さまざまな形のパーツを視覚的につなげながら、ソフトウェアをつくりあげていくプログラミング手法のこと。
プログラミング言語のことを何も知らない、小さなこども達にも直感的に扱えるということで、こども向けのプログラミング学習用途に使われています。大人が遊んでもすごく楽しいですけどね。
例えば「VISCUIT」の場合。
こども達は、紙に書いてスキャンしたり、パソコンのお絵かきソフトで書いたりした絵を「VISCUIT」に取り込んで、いろいろなルールを設定しながら、かんたんなアニメーションやゲームをつくります。
これも立派なプログラミング。
こうした活動を通して、こども達は、次のような貴重な体験をすることになります。
- 自分のアイデアを実際にかたちにする
- 自分がつくったもので遊んで、少し物足りないところをつくりなおす
- 自分がつくったものを他人にわかりやすく説明して、遊んでもらう
- 他人がつくるのに困っている部分を手伝ってあげる
個人的には、プログラミングスキルうんぬんよりも、こうした体験をすることがとても重要なことだと思います。別の場所や状況でも活きてくるからです。
今までにも図工の時間などで同じような体験をすることはできましたが、プログラミングによって、アイデアをかたちにするスピードが以前と比べて格段に速くなったと思います。
ビジュアルプログラミングを使ったプログラミング学習のいいところは、こういった体験を加速するための手段としてプログラミングを考えているところ。
手段なので応用が効き、それを学んだこどもたちの将来の可能性がぐーんと広がります。
より実践的なプログラミング
一方、「ウェブやモバイルアプリの開発を教える」というスタイルのプログラミング学習はどうでしょう。
こちらは先程よりも実践的・実用的で、かつプログラミングの位置づけが「手段」から「目的」へとシフトしています。
実用的なプログラミングの学習が「目的」になっている以上、何らかのレールに沿った状態でプログラミングをこども達に教えてあげる必要があります。その分、プログラミングスキルという意味では身につくものも多いでしょう。
しかし、こども達が体験できることの内容は、ビジュアルプログラミングで学習した場合と比較すると、すこし乏しい感じがします。ある目的に特化しすぎてしまっているので、体験したことを別の場所や状況で活かしにくいことも考えられそうです。
結果として、こども達の可能性を狭めてしまう可能性もあります。こういうタイプのプログラミング学習を小学校の授業に導入することは、はたして良いことなのでしょうか。
まとめ
個人的な考えも書いてしまいましたが、このテーマに関しては、みなさんそれぞれ、いろいろと思うことがあるのではないでしょうか。
僕は結局何を言いたかったのかというと、「プログラミング学習」といってもいろいろあるということ。
概念的なものなのか、それとも実践的なものなのか。プログラミングを手段として考えるのか、それとも目的として考えるのか。
さまざな要素の組み合わせによって、こどもたちがプログラミングを学ぶことで体験することや、得られるものは大きく変わります。もしかしたら失うものもあるかもしれません。
ほとんどすべてのことにIT・ソフトウェア技術が何らか関わっている今日この頃。こども達がプログラミングを学べる環境を用意する必要があることは確かだと思います。
問題は何をどのように学べるような環境をつくればいいのかについて考えること。
「プログラミングが授業に導入された」というニュースに一喜一憂するのではなく、プログラミング学習っていってもいろいろあるんだということを念頭に置きながら、もう少し考えてみようと思いました。
みなさんのご意見お待ちしております。
(門脇)
コメント
[…] 小学生はプログラミングで何を学ぶのか? | ShareWis Blog悩んで悩んで書いたのがよくわかる記事だった。筆者の人柄が色濃く出ている文章。 […]